「夢をかなえるゾウ2」が賛否両論ある理由はなんだろう

いい本が売れるとは言い切れないが、
売れる本、ベストセラーになる本は理由がある。

というのがsuzunoの編集者としての自説です。

よく「TVで仕掛けたから売れた」ということを言う人もいるのですが
TVで仕掛けても売れないものは売れないので、
「そこそこ売れるものが、TVによってバカ売れした」
と表現するのが適切なんだろうなぁ、と思う。

という前提で書きたいのは
「夢をかなえるゾウ」と「夢をかなえるゾウ2-ガネーシャと貧乏神-」
のこと。
どちらもゾウの格好をした神様「ガネーシャ」が、ごく普通の主人公を
成功者に導くというサクセスストーリー。

1冊目の「夢をかなえるゾウ」は200万部以上とも言われ、
ドラマ化などもされた。
人々の共感をよび、分かりやすい格言で構成し、
何よりストーリーが面白い。
そりゃ、売れます。

ただ、気になるのが2冊目。
ももちろん売れているけれど、1冊目の勢いはなく
アマゾンのレビューを見る限り、賛否両論なのである。

1冊目と2冊目の違いはなぜか・・・。
私なりに考えてみると、

  • 1冊目の面白さにより期待値が高くなっている

  • 書籍の構成として「偉人の格言」の引用で展開しているので、
    2冊目に真新しい格言、情報が少ない

  • 主人公の設定が「芸人」であり、その成功が「脚本家」という
    方向転換ともとれる成功の法則が、読者の期待を裏切っている


  • 主人公の恋愛ストーリーが自己啓発読者にはやや不要なネタになっている


  • 自己啓発読者層がほぼ変化していない




  • というのがパッと思い浮かぶ理由です。

    私は読者だったら、小説としても十分笑えるので
    これはこれでいいと思うけれど、
    編集者としては、
    最後の「自己啓発読者層がほぼ変化していない」
    という仮説がとても気になっています。

    というのも、自己啓発本は
    夢をかなえたいけど、何もしなくて、本を読むだけで満足してしまう普通の人
    というのをターゲットにしているビジネス。

    本を読んだときはやる気に満ちて、
    結局何もしない・・・そしてまた本を買って読む、
    という一定層の人たちの「ループ」により成り立っています。

    2冊目は1冊目がでて5年経っているけれど、
    その間に読者も、もれなく年をとる。

    200万人を超える人たちの中で、
    この5年で一体どれだけの人が成功を手にしたか・・・考えてほしい。
    また、この5年で新たに「夢をかなえたい」という人がどれだけいたのか。

    私が思うに、200万に人たちの人員構成も人数も
    それほど変化はしていないのだと思う。

    もちろん夢をかなえたい人はいるけれど、
    それを本に頼る人というのは、それほど増えていないのではないか。

    だからこそ、同じような内容の第2弾は
    作品として悪くないものの、賛否が出てしまっているのではないか。

    必ず読者の入れ替えがある雑誌と違う書籍で
    読者が年を取っても同じ場合、
    編集者はどうやって楽しませることができるのだろう。
    そして、新しい需要を生み出し、
    少しでも成功へ導く手助けができるのだろう。

    そんなことを考えさせる本でした。



    装丁は1冊目と似ているので、ご注意~。

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